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自然の力で土を作り、 自然の力で野菜を育てる

山と海に囲まれた自然豊かな三陸で、太陽や土や水、さまざまな微生物の力を借りて畑を耕しています。その根本には、園主・岩城創の若き日の原体験があります。

海外自転車旅で目覚めた
食への思い

いわき農園は、2010年に岩手県山田町で開園して以来、一貫して農薬や化学肥料を使わない有機栽培で、ほうれんそうやミニトマトなど約10種類の野菜を育てています。健康な土をつくり、その土に種を蒔き、野菜を育てる。自然の持つ力を借り、自然に生かされる謙虚な農業者でありたい──この思いで日々、収穫の喜びを味わっています。

山田町の北隣・宮古市で生まれ育った園主・岩城創(はじめ)が、有機農業の世界に踏み出したのは27歳のころ。きっかけは、自転車でオーストラリア大陸を縦断した一人旅でした。車輪の左右に大量の水や食糧を積み込み、ひたすら自転車をこぎ続けました。

次の町まで5日かかる自転車旅。
食料が尽きかけ気がついた生きる道。

時には食料が尽きそうになり、偶然出会った現地の人に助けてもらうこともありました。この旅を通じて、食べ物があることはけっして当たり前ではないということ、食料を作っている人たちがいるからこそ、私たちは飢えることなく生きられるのだということを実感し、自然と感謝の念が湧いてきました。そして、「自分自身も命の源である食を生み出せる人間になりたい」。そんな思いが身体の奥底から込み上げてきたのです。

このオーストラリア縦断は、システムエンジニアとして勤めていた仙台の会社を辞め、新しい生き方を模索するワーキングホリデーの旅でした。自分が生涯かけてやるべきことは、食べ物を作ること。自分の使命に出会えた喜びを胸に抱き、帰国しました。

自然に生かされる謙虚な農業

岩手にUターンして住み込みで就農。
環境負荷の少ない有機栽培を学ぶ。

世界的に環境問題への関心が高まっていた1990年代、岩城は多感な少年時代を送りました。オゾン層の破壊や違法伐採による熱帯雨林の減少、酸性雨……地球が人間のせいで危機的な状況になっていることを小学校の授業で学ぶうち、「自分たちの住む地球を守らなくては」と強く思うようになりました。

このころからの思いがあったからこそ、オーストラリアで食の大切さに気づいた時、有機農業を志したのは、ごく自然なことでした。有機農業は、化学的に合成して作った肥料や農薬を使用せず、自然の力を活かして行う農業です。「有機であれば、その土地の自然環境を傷つけずに、命の源である農作物を作ることができるに違いない」。そんな思いを抱き学び始めました。

農業の経験や有機栽培についての知識を身につけるため、故郷の岩手にUターンし、一関市のかさい農産に住み込みで働きながら、ゼロから農業を学ぶ日々を過ごしました。

師匠である葛西信昭さんのもとで2年間修業しながら、生態系と調和した農業理論を構築したジャパンバイオファーム(長野県)の小祝政明社長をお呼びして勉強会を開き、あらためて土の中の環境や生き物の多様性を守る有機への思いを強くしました。

初めての収穫は、
避難所の炊き出しに

岩手で有機農業を始める準備を進めるうち、縁あって出会ったのが、山田町の荒川地区。三陸海岸に面した山田町の中では北西部に位置する農村です。葛西さんのご縁で、故郷の宮古市に近いこの地域で耕作放棄地となっていた畑をお借りできることになったのです。

しばらく使われていなかった畑の開墾には、山田町豊間根の水稲農家で元県農業農村指導士の木村良一さんをはじめ、ご近所の20軒近い農家さんが草刈り機を手に集まり、力を貸してくださいました。
こうして、2010年に始まったのが、いわき農園です。

支え合い、生きるコミュニティ。
地域に根ざすことで見えた次の使命。

初めての収穫は翌年の春の始め。
まさに収穫を始めた直後、三陸の一帯はあの東日本大震災の津波で甚大な被害を受けました。呆然とする間もなく、自転車に収穫したばかりのほうれん草と山東菜を積めるだけ積んで、何度も避難所に運び込みました。震災は三陸で生きる私たちにとって本当につらい体験でしたが、この地域には食べるものを作る生産者が大勢いて、協力し合って炊き出しをする人と人とのつながりもあるのだということを改めて実感した経験でした。

開園から年月を重ね、少しずつではありますが、栽培できる野菜の量や種類が増え、1人から始まった農園に、一緒に働く仲間たちも加わってくれました。引退する高齢の農家さんから畑を任されることも増え、農業の将来を担う人材を増やしたいという思いから、新規就農希望者の研修の受け入れも始めました。師匠たちから受け取った農業のバトンを次の世代に渡すことも私たちの役割だと考えています。

未来に種を蒔く

「野菜嫌いの子どもがいわき農園のほうれん草は食べられました!」
日々、お客様からそんな声をいただきます。
私たちは、有機栽培は環境にやさしいだけではなく、おいしさの理由でもあると考えています。それは、有機栽培の野菜は、土の中に広く根を張って、そこから吸収した栄養分を使って育つから。自然本来のスピードで土の中のさまざまな栄養を肥やしに成長するから「いわき農園の野菜は甘くて、おいしい」そう言っていただけるのです。

人と人とのつながりで生まれる未来。
受け継ぎ、次の世代へ渡す。

いわき農園には夢があります。それは、大人も子どもも日本人も外国人も、さまざまな人たちが自由に行き交う農園になることです。美味しく、安全な農業だからこそ、多くの人たちに私たちの農園で土に触れ、収穫の喜びを感じてもらいたいと願っています。
この農園での体験をきっかけに野菜が好きになったり、もしかしたら「将来、農家になりたい」とあこがれる子どもたちが現れるかもしれません。

有機による循環型の農業は、未来の子どもたちに豊かな自然環境と豊かな食環境を引き継ぐこと。背伸びせず、今の私たちにできる形で未来の子どもたちのためにできることを実践しています。

土に種を蒔き、未来に種を蒔く。
それがいわき農園の使命です。

OUTLINE

商号 株式会社いわき農園
所在地 岩手県 下閉伊郡山田町荒川第4地割90番地4
TEL 0193-77-5900
創業 2011年(平成23年)4月1日
設立 2022年(令和4年)3月9日
代表者 代表取締役 岩城 創
資本金 300万円
作付面積 ハウス 50a、露地 150a
従業員 社員 1名
研修生 2名
パート 3名
事業内容 農産物の生産・販売
観光農園の運営
研修生受入・就農支援
宮古方面からのアクセス 三陸沿岸道路 宮古南IC 10.4km(車 13分)
釜石方面からのアクセス 三陸沿岸道路 山田北IC 1.8km(車 3分)
最寄駅からのアクセス 三陸鉄道 豊間根駅より2km(車 4分/徒歩 29分)

2024年10月現在

HISTORY

2011年4月 いわき農園開園(ハウス 8a)
2013年4月 規模拡大(ハウス 20a、露地 0.5ha)
2016年4月 規模拡大(ハウス 30a、露地 0.5ha)
2017年12月 有機JAS認証取得(ハウス 11a)
2018年9月 規模拡大(ハウス 40a、露地 1ha)
2021年9月 規模拡大(ハウス 50a、露地 1ha)
2022年4月 規模拡大(ハウス 50a、露地 1.5ha)
2022年12月 有機JAS認証圃場増加(ハウス 11a、露地 30a)
2022年3月 株式会社いわき農園設立
2024年4月 観光農園事業開始